ねえ。
もしもこの世界に、神様がいるのなら。
ねえ。
もしもこの背中に翼が生えたなら。
ねえ。
もしもこの海原を舞う鰭がついているなら。
俺は
俺の知らない。
俺しか知らない。
自由が有る。
友達が在る。
自分が居る。
そんな世界へ
羽ばたいても良いですか──…
────…
「なあ!数学の宿題写させてくんね?」
「またかよ……」
場所は峠原学園高等部。こいつは小学校からの腐縁の『藍河 茉実(あいかわ まみ)』。女みたいな名前の癖に、女のケツばっか追い掛けてるような100%一般男子。
まあ、ソレを一般男子とは思いたくないが…。
そして茉実は毎回数学の授業が始まる寸前に俺の前まで来てノートをかっぱらっていく。
「たまには自分でしろよな」
「いいじゃん♪頭イイ憂(ゆう)のノートだと安心じゃん?」
「はっ…」
いつもと同じ。
繰り返される会話。
日常のエンドレス。
──ガタンッ…
「あ、はよー佐野!!最近遅刻ばっかだな!知らねェぞ、担任にゲンコツ喰らっても!」
けけけっ、と楽しそうに笑う茉実。
そんな茉実を無視し、佐野は憂に挨拶を交した。
「少し寝坊した…、憂。今日は喧嘩売られなかったか?」
「…………うん」
“喧嘩”──。
喧嘩なんてものじゃないけど。
本隠されたり。
呼びだされて殴られたり。
理由なんて、明確じゃない。
ただ 俺の生意気な性格が好めないだけ。
『馬鹿じゃないの』と言う視線が腹立たしいだけ。
けして涙を流さない俺にムカつくだけ。
「そうか…今度からはもう少し早く来るとしよう」
そう言って
俺の頬についた痣を優しく撫でた。
「これは……殴られたとかじゃ…!」
「ああ、知っている。」
わかったから、と。
もう一度優しく撫でた。