チャイムが鳴ると同時に青木が教室に入ってきた。教室がばたつき、慌てて席に着く者、かまわずしゃべり続ける者、様々である。。
「ほらっみんな席つけぇー」
数学の教師らしからぬおっとりした声で青木は言った。
青木はまだ若い。25歳である。凜子と7つしか変わらないのだ。その若さ故に生徒からは親しまれていたし、なめられてもいた。
勿論、凜子はなめていた。
しかも、ほかの生徒とは全く違った意味で。
「ほらみんな早く席つきなさい…黒江!ぼんやりしてるんじゃない、教科書出せ教科書…」
注意され、凜子は無表情のまま教科書を無造作にぽん、と出した。
こちらを見ている青木を見つめ返す。
青木が目をそらしたのを見て凜子は薄く笑った。
(どうせ、私とセックスしたいって思ってるクセに)
凜子はパラパラと教科書をめくった。