*第一章『出逢い』
私は急いでいた。
買い物に誘われていたのに寝坊。
待ち合わせは一時だったのに慌てて地下鉄に飛び込んだときには既に一時を過ぎていた。
遅れる事はメールで伝えていたけど、私とした事が…
待ち合わせの時間に遅れた事なんて一度だってなかった。
初対面の相手を待たせる訳にはいかない。
人ごみでなかなか前に進めないのがもどかしい。
待ち合わせのドン・キホーテに着いたとき、彼の姿はなかった。
メールの着信音がなる。
【着いたら連絡して?】
【着いたょ?】
【どこにいる?】
【ドン・キホーテのタバコ売り場の前!】
【わかった、今行く?】
すぐに彼は来た。
お洒落に興味がある者同士。私はその日頑張ってお洒落していたけど、彼はすっごくお洒落で
(一緒に歩いて恥ずかしくないかな?)
と何度もショーウインドウに映る2人の姿を眺めた。
『可愛いから大丈夫だよ』
彼の口から出る優しい言葉は私を温かい気持ちにさせてくれた。
初対面とは思えない程リラックスした2人は友達同士の買い物よりは"デート"という感じ。
手をつなぐとか恋人らしい事はなくても甘い空気に包まれていたんだ。