俺の名前は相川 祐介。
享年17歳。
職業、元高校2年生。今は……よく分からない。
「こんにちは」
背後からふいに声を掛けられて、俺は振り向いた。
「黄泉の国へようこそ」
そこに立っているのは、なんとも優しそうな顔をしたじいさんだった。
俺は、死んだ。ついさっき。大型ダンプに跳ねられて、即死だったのだ。
「こちら側の国は辛いことも苦しいことも何もありません。永遠に続く安楽の世界ですよ」
じいさんは心地良い声で俺に言った。
辛いこと、苦しいこともない……。なら、どうして今俺はこんなにもやりきれない気持ちでいっぱいなんだ。
俺はその優しそうなじいさんを見ないように、顔を背けた。
「……どうやら、あなたさんには、生前に未練があるみたいですな」
じいさんはふむ、と何かを納得したように頷いた。
未練ね、未練ならある。
最後の最後に、彼女に気持ちを伝えることが出来なかったことだ。
ずっと片思いだった彼女、高橋 彩香に。