If the miracle occurs

梨亜  2008-01-22投稿
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私の転校初日、始業式から二日ほどたったある日。
朝のHRの五分前になっても、隣の席の、月館類くんの姿はなかった。
お休みなのかな。そういえば昨日、寝不足だとか言っていたっけ。
そんなことを考えていると、担任の亘理舞桜先生がガラガラと扉を開けて入って来た。
今日は日直だった圭太くんが挨拶の号令を済ませたあと、亘理先生は「悲しいお知らせです」と本当に悲しそうな声で言った。
「類くんだけど、今日は体調不良でお休みです。みんな、冬が終わったからって、風邪の予防は忘れちゃダメだよぅ。―それから…」
この先生、欠席者が出るたびにこうして報告してるのかな。
それとも、やっぱり類くんだから?
亘理先生と類くんは、同じ家に住んでいるって、聞いた覚えがある。
確か…。エレナちゃんって一年生の子とも一緒に…。
結構複雑な家庭環境なのかも。

気付けば、いつの間にか朝のHRは終わっていた。
同じクラスの美空ちゃんと圭太くんが、私の席のそばに来て、他愛もない話をしていた。
聞いちゃいけないことだったのかもしれないけど、私は、知っておきたかったんだと思う。いつの間にか、口走っていた。
「あの…。類くんって…?」
会話が急に途切れた。
少しだけど、恐かった。私、いけないこと聞いたんじゃないかな、って。
「ああ、類?なんで休みなのか、てこと?」
そんな私をよそに、美空ちゃんはいつもどおり、明るい口調で言ってくれた。
「知恵熱、とちょっと似てるのかな。なんか、いろいろ考えすぎちゃうと、眠れなくなるらしくて…。最終的に体調を崩しちゃうんだよね」
美空ちゃんは、少し苦笑いを浮かべて、圭太くんの方に向き直った。
「そ。あとは、行事の前とかにも弱いらしいぞ?遠足なんかは、本番よりも前日に弱くて、あまり参加できてないんだよなぁ」
今度は圭太くんが言った。
複雑といえば複雑というか…。
損な人生を送ってるんだね。

結局その日の授業は、夢見心地のまま終わりを迎えた。
内容なんか、すっかり頭に入っていない。
授業中は、ずっと考えごとをしていた。
類くんのために、私がしてあげられることってないかな。



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