時刻は三時頃。
学校に行っていれば、もう放課後だろう。
ベッドに潜りこんだままの僕は、ぼーっとしながら、そんなことを考えていた。
そばでは、リィリアとヴィオードが、それぞれおやつのショートケーキを食べている。
リィリアはついさっきまで僕にも食べさせようとしていたが、とてもそんな気分じゃない。
丁重にお断りして、今に至るというわけだ。
僕は、なにか悩みごとがあったりすると、眠れなくなって、体調を崩す。
今回の悩みは…。もちろん、悠里亜のことだった。
先日、握手により読み取った悠里亜の心。
自分のことを『吸血鬼』だと言う…、まあ直接言われたわけではないけど。
僕は、どうしたらいいのだろう。
「うゎ…。おっきな家…」
考えたあげく、私、悠里亜は、素直に類くんのお見舞いに行くことにした。
お土産に商店街で買った、お気に入りの和菓子と、代わりの先生に頼まれた、プリントを持って。
教員名簿を見て来ちゃったんだけど、迷惑じゃなかったかな。
だいたい、具合悪いんだから寝てるかも。
それから、私なんかに心配される筋合いない、とか思われたりしたら…。
ううん。
きっと、類くんなら大丈夫だよね。
ちょっとだけ考えてから、私は玄関先のインターホンを鳴らした。
「類!るーい!ピンポンなってるの!」
あれからしばらくして、少しうとうとしていた僕は、リィリアの声に起こされた。
「ん…?この時間なら、多分エレナだろ」
枕元においていた目覚し時計をちらりと見て、僕は答えた。
「エレナ?でもエレナならピンポンしないの」
「きっと、鍵を忘れたりでもしたんですよ。さっさと開けてきてあげなさいです、チビ」
ヴィオードが銀髪の長い巻き毛をはらいながら、言った。
毒のある返答にふくれながら、リィリアは玄関へ向かった。
「エレナー!お帰りなさいなの〜♪」
そう言いながら、リィリアがドアを開けたらしい音がした。
女の子の声が聞こえて来たことにびっくりした私は、ドアが開いてから、さらに驚くことになった。