そして翌九月三日・第三中学校生徒会長室―\r
いつも通り8:00には入った梅城ケンヤは、既に呼び出しをかけていた二人の部下の訪問をまった
コンコン
ノックが目当ての来客の到着を告げるまでに、そう時間はかからなかった
『失礼します』
挨拶とともにドアを開けて、《彼等》は入室して来た
男子と女子が一人ずつ―\r
『やあ、今日は早々とご苦労さん』
デスクの前に並んだ二人をねぎらうケンヤの様子は至って上機嫌だった
ケンヤから見て右に立つ男子生徒は風紀委員長・赤木マモル
梅城ケンヤの腹心でありこの学校の軍事力―約80人を束ねる実戦部隊の長
生徒会ナンバー3の重鎮だ
鍛え抜かれた体には一切の脂肪分がなく、頭はいつも角刈りでいかにも軍人を連想させる容姿をしていた
事実彼は三代続く自衛官の家に育っている
びしっと着込まれたブレザーの左袖には鮮やかな赤い腕章が巻かれ、そこには白墨で《風紀委員長》と誇らしげに描かれている
この学校の治安を預かり、近隣の不良やイジメグループを震え上がらせる、それは力と権威の象徴だった―\r
そしてその力を容赦なく振るって、赤木マモルはイジメグループを中心に、校則や治安や秩序を乱す者を容赦なく取り締まり・捕縛し・尋問し・拷問し・処刑しまくった
そのほとんどが梅城ケンヤの命令によって成された物だったが、彼はその命令を完璧かつ忠実に果たし続け、上司の期待を裏切った例しは一度もなかった
そして、ケンヤから見て左側に立つのは―\r
港リリア―\r
本校の副会長に生徒会長室書記長を兼ねる言うまでもなくナンバー2の座にある
黄色いバンダナで巻き上げられたブラウンヘアーと青い目が特徴的な美少女で、更に校則を無視したミニスカートもトレードマークとなっていた
こう言う所、梅城ケンヤはあまりやかましく言わない質みたいだった
ともすればワンマンに陥りがちな梅城政権内にあって、もの言う副会長として彼女はケンヤからすらも一目置かれていた
正にこの二人こそ梅城生徒会の車の両輪―少なくとも、これまではそうだったのだ
だが―\r
『困った事になった』
信頼すべき部下達を相手に、梅城ケンヤはなぜかしかめっ面をして見せた
『君達には不都合だが、もう後がないので言わしてもらう』