その夜は、クリスマス・イヴだった。 彼と私は、偶然、教会の前を通りかかった。中からは、賛美歌の調べが、響いていた。
その美しい調べに導かれるように、気が付くと、私たちは、扉の中にいた。教会の中は、圧倒されるような荘厳な光に満ちあふれていて、私たちは、その光景に、しばらく、我を忘れて酔い痴れていた。
でも、ちゃんと閉めたはずの扉の隙間から、冷たい外気が流れ込み、私は、ふと、我に返り、扉の外に、目をやった。その視線の先には、赤々と燃える暖かそうな、焚き火の炎が見えた。
どうしても、その炎にあたりたくなった私は、もう一度、扉を開けた。行き場所もなく何時間も、外を彷徨っていた私たちの身体は、すっかり冷えきっていたからだ。一歩、扉の外に出てみると、そこには、さっきまで、扉の隙間から、確かに見えていたはずの暖かい焚き火などなく、凍て付くような冬の空からは、今にも、雪が、降り出しそうだった。