皮の剥げた古いソファに座らされ、ゆかりと平田は居心地悪そうに体を、気付かれない程度にゆすった。 前橋はお茶を煎れてくると言って、備え付けの電熱ヒーターのあるところまで行ってしまった。
部屋を一回、ぐるりと見渡す。
いつもどうりの乱雑とした室内。黄ばんで変色したコピー用紙をホチキスで纏めた束や、曼陀羅のタペストリー。なぜタペストリーが床にでかでかと敷かれているのかは不明だ。棚は備え付けと新しく作ったものが置かれてある。いつもの汚くて、でもごみのない乱雑な研究室。でもなぜだかゆかりはすさまじい違和感に襲われていた。違和感がなさすぎておかしすぎるのだゆかりは黙っている平田に視線をやるが、平田は冷や汗まみれになりながらカチカチになっている。
だめだ。頼りにならない。早々に見切りをつけて、ゆかりは前を見る。
それにしても遅い。
お茶を煎れるのに何分かかるのだろう。彼が席をたってすでに十五分も過ぎていた。
何か手間取っているのだろうか。それなら手伝わなければ。立ち上がって、ゆかりは平田を見た。
「平田、私、先生見てくるねちょっと遅いか」
とたんに、痛みが体を突き抜けた。