「レイ、明後日14:00に地中海へ出発だってさ」
仮眠室から出て来たレイチェルに僕は言った。
「地中海っ!?いきなりっ!?」
レイチェルは驚いて言った。
無理もない…今や地中海は鉄屑が溢れ、血で海が黒ずんでいると言われている所だ…。
「…ユウタ…ちょっと一緒に外に出ない?」
「え…ぃぃけど…」
僕らは二人でカイロ基地の外に出た。
砂漠の地平線に太陽が沈みかけている。
「ユウタは…なぜ軍に…?」
「…友達を…親を…守れなかったから…何も出来ずにね……ここに保護されてしばらく暮らしてて思ったんだ…もう誰も死なせたくないって…だから…」
「そっか…」
「…レイは…?」
とぶっきらぼうにつぶやく。
「あたしは…親が両方とも軍の将校だから…」
「軍人家系…ってやつか…」
暫く沈黙が続く。
太陽があと少しで完全に沈む。
「死にたく…ないよ。死なせたくも…ない…誰も」
「はぁ?軍人が何言ってるんだよ…」
レイチェルは少し震えていた。
「あたしね…医者になりたかったの…病気で苦しんでる人を一人でも多く助けたかったんだ…けど…まさか人を殺す側になるなんてね…アホみたい…」
「なら軍人辞めなよ…そんな気持ちで戦場に出たってすぐに死ぬだけだよ…」
「そんなわけにはいかないのよ…軍人家系ってのはね…」
日本育ちの俺には何とも言えないカルチャーショックだった。
「…大丈夫だよ。俺が守るからら…もう誰も死なせないから」
「ユウタ…死なないでね…」
「卑怯者のジャスティスなんかにやられるもんか」
強く言ったものの内心は不安でしょうがないのは僕も同じだ。
「さぁ、宿舎に戻ろう」
僕はレイチェル手を差し延べ立ち上がらせた。
レイチェルは少し涙ぐんでいた。
空はすっかり暗くなっていた。
2人はそれぞれの部屋に別れ、もう寝ることのなくなるであろう使いふるしたベッドに上った。
「あと何日…あの夕日を見られるのかな…」
ベッドで寝ながらそう思った…
作戦開始まであと15時間。