不意に胸に短剣を突き立てられた。
怒りに体が震える。
短剣に込められた意志が、想いが。
どれだけ軽薄でくだらぬものなのか、突き立てた本人は知らない。
引き抜いて、相手の胸を突き返してやろうとも思ったが。
私のお堅い“理性”が邪魔をする。
舌打ち、溢れ出る血もそのままに。
私は静かにその場を去った。
抜いて捨てた短剣が、乾いた音を立てて転がった。
……私は捨てたわけじゃない。憎しみを。怒りを。
ただ、一時忘れるだけ。
やがて、誰かが短剣を拾うだろう。
誰かが、誰かの胸に突き立てるために。
それは、あるいは―。
未来の私。