イントロダクション
『ハート・シェイプト・ボックス』
ヘイト ヘイト
またひとつ持病ができたんだ
金じゃ換算できないお前の貴重な忠告に
俺はいつまでも負い目を感じっぱなし
カート・コバーン
幼少期、あまりに落ち着きがなく、支離滅裂な言動を繰り返す自分をおかしく思った母は自分を病院に連れていった。
アスペルガーとかいう障害と診断された。それは自分ではどうでもいい事だったのに、母親は気に食わなかったらしい。
その日から母親の気違いじみた教育と、カウンセリングに苦しめられた。
嫌になった。自分に否定的な言葉しか投げ掛けない母。いつしか母は母という存在を無くし。自分の存在を否定するロボットになった。
ロボットになんか興味はない。ある日を境に僕は母とコミュニケーションする事をやめた。人間の友達はいない。普通とは違ったから。
テレビが好きだった。テレビだけが僕に楽しい情報を提供してくれた。
ある日、ニュースが写し出していたのは一人のミュージシャンだった。死んだらしい。写真が写し出される、堀が深い外人だ。長く伸び、ウェーブがかかった金髪が特徴的だった。
僕に似てるな、と思った。なんとなく。
次の瞬間テレビの画面が移り変わった。
電撃が、走った。
テレビが映し出していたのは、その男が生前やっていたライブ。
破壊的だった、呆れるくらいに。
悲痛だった、涙が出るくらいに。
悲しみと怒りとセンチメンタルが心の中に流れて来て、頭がおかしくなりそうだった。
初めて声を出して、泣いた。
そして、理解した。
僕は、この人の代わりになるために生まれてきたんだって。