妙な前置きをしてから梅城ケンヤは宣告を下した―\r
『我が生徒会風紀委員長・赤木マモル並びに生徒会長室書記長・港リリア、君達を解任する』
それを聞いて、一人は単純な、もう一人は複雑な心理的動揺から冷や汗を流し始めた
重苦しい沈黙が会長室を支配する
『理由をお聞かせ下さい』
顔を真っ赤にして、赤木マモルが問うた
確かに彼にはそれを聞くだけの資格がある筈だった
だが―\r
『言う前にその腕章を私に寄越したまえ赤木―それはもう君には必要ないのだから』
梅城ケンヤの仏頂面はびくともしなかった
『何故私達を解任なさるのですか!?』
赤木とは対称的に真っ青な顔をした港リリアは、それこそ会長に掴みかからん勢いで抗議を始めた
『私達が不適格だとでも!?それとも、それとも―何か言えない事情でもあるのですか!?』
ある
しかもそれは港リリアの側に
ひょっとしたらバレたのか?
港リリアは内心恐怖ではち切れんばかりになっていた
それはそうだろう
彼女の秘密、梅城ケンヤを密かに始末してやろうとその機をうかがっている事実が知られたら、ただでは済まない
解任程度では済まされない
それが普段冷静な彼女を後一歩で錯乱させかねない程震えあがらせていた
しかし―\r
『落ち着きたまえ副会長、いつもの君らしくない』
片手を挙げてそれを制する梅城ケンヤに、その事実を悟った様子はないみたいだった
『赤木、君もだ。前にも言っただろう?私の理想を信じるか?』
『―信じます』
こわばる声で、赤木マモルは答えた
『それで良い。ではその腕章を渡したまえ』
満足気にケンヤはうなずき、赤木マモルに向けて手を伸ばした
赤木マモルはうなだれながら、それでも会長の命に従った―\r
梅城ケンヤに鮮血色の腕章が返される
事実何人もの鮮血を貪欲に吸い込んだそれは力の印―\r
正義と支配の在りかだ―\r
手にした腕章を机に置いたケンヤは不思議と笑顔を示した
『有難う、これで私も胸のつかえが降りたよ』
そして、その笑顔を今度は港リリアに向けて
『副会長、君も書記長職を辞してくれるね?』
『ご命令とあらば』
身構えながら港リリアは慎重に応えた
梅城会長は一体何を考えてるんだ?