愛美には深刻な悩みがあるらしい。
「愛美ちゃん…話してみて…何かのお役に立てるかも知れないわ」
奈々さんは相談に乗ってみようと思った。
「実は…私…愛する方が…でも…叶わない愛なの…どうしたら良いのか解らなくて…」
「そうなんだ…で…どういう人なの?」
「彼も愛してると言ってくれてるの…でも私達は一緒にはなれないと彼が…」
愛美の頬に光る物が見えた。
「何故かしら…私が彼とお話ししましょうか…」
「でも…」
「大丈夫 私がキューピッドになってあげるわ」
奈々さんはニッコリ微笑んだ。
「ありがとうございます奈々さん!やはり私の思った通り奈々さんはお優しいですわ」
今日会ったばかりなのになんだか奈々さんは愛美が放っておけない気持ちになった。
「今日はもう時間が無いから明日にでも彼に合わせて頂ける?」
「はい…私が明日学校の帰りお店に伺いますわ…」
愛美は少し笑顔が戻った。
「奈々さんお送りしますわ」
「ありがとう愛美ちゃん」
明日愛美は奈々さんのお店に伺う約束をして車を前によこすようにとメイドに言った。
少しして車が玄関先に来たようだ。
「愛美ちゃん ここで良いわ…ありがとう」そう言って奈々さんは車に乗り込んだ。
「奈々さんありがとうございます…では明日…
佐野…お願いしますね」
「承知いたしましたお嬢様」佐野はそう言うとドアを閉め運転席に乗り込んだ。
奈々さんは車の中で考えていた。
「あの…失礼ですが…お嬢様は何か貴女に申しておりましたか?」佐野が奈々さんに話しかけて来た。
「あっ…ええ…ちょっと相談事を…」
「やはりそうでしたか…貴女はどうされるおつもりですか?」
「私は力になると言いましたが…何か…」
佐野は少し黙ったかと思うと急に路肩に車を停止させた。
「お嬢様の相談事には乗らなく結構です」
そう言って後ろを振り返り奈々さんを見た。
綺麗な切れ長の瞳だった。深く帽子を被っていたため解らなかったがかなり素敵な男性だと分かった。
「どうしてですか?愛美ちゃんの悩みをご存知なんですか?」
「とにかくお嬢様の相談された事は無理なお話しなのです」
奈々さんはピンと来た。
相手はこの佐野さんなんだと…
…つづく…