奈々さんは
明日愛美ちゃんと話しをしようと思い何も言わない事にした。
「佐野さん ありがとうございました。」
「いえ…お嬢様のお申し付けですので……明日お嬢様をお連れしますが
お嬢様の相談事に乗ると言う事はお嬢様を悲しませる結果になります。もう構わないで頂きたいのです。」佐野はクールな眼差しで奈々さんに言って車のドアを開けた。
「さあ…着きました。では私はこれで」
佐野は車にささっと乗り込み帰って行った。
「愛美ちゃん…なんとかしてあげたい…」奈々さんは店にもどりオーナーの意見を聞こうと思っていた。
佐野は車を屋敷の車庫に入れホースで水をかけていた。
手入れも仕事のうちなのだ。
「カラン…」何かが転がる音がした。
「誰ですか?」「佐野…ありがとう…奈々さんを送って頂いて…」
愛美が陰から出て来た。
「お嬢様…いえ…お申し付けですので…」
「佐野…二人の時は愛美と呼んで下さい…」
愛美は潤んだ瞳で佐野になだれこんだ。
「お嬢様…いけません…私にはお嬢様を幸せには出来ません…どうかご理解を…」佐野は慌てて突き放した。
「佐野…何故なの?…私を愛してないの?」
「いえ…愛しております…しかし…私ではダメなのです…どうか…ご理解下さい…」
「佐野…私…お父様から婚約を勝手に決められるみたいなの…」
愛美は深刻な顔で言った。相手は父親が取引している銀行の御曹司らしい。
「……それはおめでとうございます…」
「佐野!何故そのような事おっしゃるの?…やはり私を愛していないのですね…」
「……」佐野は黙り込む。
愛美は泣きながら走り去る。
「お嬢様…愛しております…でも私では…」
佐野の頬も濡れていた。
…つづく…