「特別便?」
「えぇ、あなたには貨物室に乗り込んで頂きます」
「嘘でしょ!?」
「嘘です。 あれを見てみな」
そこには一基のセスナが留まっていた。青の流線型が太陽に反射して輝いている。
光は久々に見るセスナに興奮気味である。光は父親と国内をヘリコプターや飛行機で飛び回った経験がある。大体は自分の理解出来ないような会議のついでにであったが。
「よくチャーターしたわね」
「御褒めの言葉ありがとうございます。 実は停留料金のほうが馬鹿にならなくて……」
「さぁ、いこうか」
マークが二人の背中を押し、搭乗口に誘導する。Jは両手両肩に重そうな荷物を持ちながら。
「官制長、これを見てください」
慌てた様子で一人の官制士が書類を持ってきた。
受け取った重厚のある男、どうやら現地最高責任者のようだ。
白い髭を生やしたその男は眉間にシワを寄せている。
「いつ来た情報だ?」
「ちょうど5分前です。 発信源はアメリカのアリゾナ州、確認が取れましたので間違いありません」
官制長は少し考えたなり、マイクに向かって叫んだ。
「157番ゲートの小型旅客機を確保しろ」
「157……157……っと、ここか。 しっかし遠いな」
光一行はゲート157の前に来ていた。
「パスポートとチケットを拝見」
にこやかに話しかけて来たのはゲートスタッフ。
「はい」
素直に四人分を光が手渡した。
「日本は楽しかったですか?」
勿論、相手は外人だと思い込んでいるため話している言葉は英語。
「あぁ、特に富士山と自動販売機には感動したな」
返答は望。
「そうでしたか、セスナとは羨ましいですね。 ではアメリカまで良い旅を」
「ありがとう」
望は得意げにパスポートとチケットを受け取りすごすごとゲートを通り抜ける。
光達も後を追う。
プルル……プルル……
四人がゲートをくぐり終えた時、後方で業務用の電話が鳴ったのが聞いてとれた。
「はぃ……え? わ、わかりました!」
急いで振り返ってみるが光達の姿はなかった。