あの時雨が降ったのは、
私があまりにもヒドイ顔で泣いてたから…。
子供の様に泣いてたから…。
神様が哀れんで与えてくれた『慰めのプレゼント』
だったんだ。
ほら、雨の粒で涙が消えてく。
最悪だ…。
今日は何をやっても上手くいかない。
メイクも髪型も決らなかったし、電車も乗り遅れた。
おまけに、今日は生理痛がヒドイ。
ただでさえ、イライラするのに昨日達也と喧嘩した事が尾を引いていて、私はMAXに苛立っていた。
駅を出るとポツリポツリと雨が落ちてきた。
「ホント最悪!」
どうして私だけこんなめに遭うのかと、まるで悲劇のヒロインの様に雨に打たれながら歩いた。
ガコッ?
気が付くと、私の左足は裸足になっていて、振り返ると白いパンプスのヒールが歩道の溝にハマッテ、空しく雨に濡れていた。
何だか泣けてくる…
こんな最悪な日なのに、今日は愚痴を聞いてくれる相手がいない…。
後ろに戻ってパンプスを引き抜き、私は家路を急いだ。
ブーブーブー
鞄の中で携帯のバイブが鳴り響いた。
何だか嫌な予感がする…。
『メール一件受信』
from 達也
Sub Re:Re:
携帯を持つ手が震えた。
昨日あれから色々考えたんだけど、俺ら終りにしない?
…。
頭の中が真っ白になった。
だって、こんなのあり得ない。
昨日喧嘩したのは、私の話しを聞いてくれない事に怒っただけで、昨日「もう別れる」って言ったのは、「ゴメン」って優しく抱締めて欲しかったから。本気で別れたい訳じゃない。
私は達也に電話をかけた。
ゴメンって言おう。
別れたくない!!
雨足は徐々に強くなり、冷たい雨が頬を伝って落ちた。
電話は虚しいコール音が響くだけで、達也は出なかった。
電源ボタンを押すと画面はメール受信へ切替わり、メールを受信した。
from 達也
Sub Re:Re:
さよなら。
終った…
画面に雨が落ちて、文字が滲んでいった。
メールで一行のさよならで終るなんて…
嘘みたいで笑えてきた。
気付けば土砂降りで、私は冷たい雨の中少しの間笑いながら泣いて、次は子供の様に泣きじゃくった。
雨はどんなに泣いても、涙を消した。
私の恋は一行のさよならで雨に流されて消えた。