戦争―\r
その言葉を耳にして、港リリアと赤木マモルは再び凍り付いた目をお互い合わせた。
学校内司法自治全権委任法施行後、権力を得た学校同士の争いは絶えない。
だが、それはあくまで《紛争》だ。
つまり小競り合いだ―\r
だがここで、梅城ケンヤは確かに戦争と言う言葉を使ったのだ。
梅城ケンヤと言う男は、間違ってそんな言葉を使う様な男ではない。
その事は、二人とも良く知っていた―\r
『戦争とは?何時、どことですか!?』
『まだ分からない』
険しくなった赤木マモルの顔に梅城ケンヤはかぶりを振った。
『分からないが、そのリスクは近い、遠からず起きるだろう』
『お、お待ち下さい!』
港リリアは身を乗り出して卓を叩いた。
『穏健派となら、和平は成功したじゃありませんか!!』
和平交渉の総責任者はかんかんだった。
『ああもちろんだ』
ケンヤは否定しなかった。
『穏健派―九重モエはそれで良い。向こうも動かない。だが、いやだからこそ、今の内に体勢を整える必要があるのさ―背後に敵がいない今の内にな』
梅城ケンヤは構想の一端を明らかにした。
『我が校を狙う勢力―我が改革を憎む存在はゴマンと居るのさ―穏健派だけじゃないんだよ、俺達の敵は』
そしてケンヤは、なかば自分に語りかけるようにぽつりと呟いた。
『それは別に―外部とは限らないかもな』
その言葉に、港リリアは一瞬だけ胸の鼓動を飛び上がらせた―\r
梅城ケンヤはゆっくりと立ち上がり、腕章の入ったガラスケースを開けた。
『本校生徒会副会長・港リリア並びに本校元風紀委員長・赤木マモルに口頭で伝える』
『はっ』
『風紀委員会は今日をもって廃止』
最早ケンヤに何を言われても、二人は驚かなかった。
『そして旧風紀委員会を二つに分ける―新たに学防委員会と内務委員会を新設する』
『はい』
『赤木マモル―君に新設学防委員会・委員長への就任を命ずる、さあ、腕を出せ』
マモルは腕を勢い良く差し出し―梅城ケンヤは青地に《学防委員長》と白墨で描かれた新しい腕章を手ずから巻き付けた。
『港リリア―君は内務委員長だ。しっかりたのむぞ』
やや細い腕にしっかり巻き付けながら、梅城ケンヤは激励した。