「大丈夫かしら、イーズ達 …… 」
屋内で弩(ど)を構えていた美奈が不安げな面持ちでもらす。
しっかりと閂(かんぬき)をかけて窓も塞いであるため、外の状況が掴めない。
「う〜ん ‥ 多分心配いらないよ。 さっきすっごい掛け声が聞こえたじゃん? ありゃ、獲物を仕留めたかんじだよ」
響子が勝ち気そうな声で、美奈の不安を打ち消すように言う。
「そうそう、あの娘がやられる姿なんて、想像できないもん」
おっとりとした顔立ちの由紀が、響子に同意する。
ばぁん! といきなり扉に何かが叩きつけられ、音と共に閂が砕けて人影が転がりこんできた。
「響子、美奈、射って!」
イーズの甲高い叫び声を耳にした二人は、グリーンの迷彩服に向け、反射的に矢を放っていた。
「芳、光、お前らも来い!陳は雑魚(ざこ)どもの掃除を、残った連中と一緒に頼む!」
李兄弟と陳に早口で指示を下すと、リンは敵の後陣目がけて突進していく。
まことに元気が良い。
「オ前、死ヌ」
金髪の、狼の様な男が注射針の化け物を半ダースほど右手に構え、抑揚のない口調で言う。
男、ジェフの持っている武器は【ニードルナイフ】と呼ばれるものだ。 刺されば多量の出血が続く。
「殺人のプロだぞ、こいつらは ……」
ささやく様な小声で、村山剛がつぶやいた。
「さっきのナイフ投げ野郎と同類か」
山際晋は、蛇を連想させる東洋系の男、木崎に鋭い眼光を突き刺した。
二名の殺人機械たちは、いささかも表情を変えずにニードルナイフを晋と剛に投げ付け、コンバットナイフで切り掛かっていった。