その少女は小学生まではとても明るい子であった。
しかし、中学に入った頃から彼女は変わった。
誰かの言葉に傷付き、周りの視線に怯え始めた。
人を信じられなくなり、笑わなくなった。
行き場所などどこにも無かった。
自分自身を責め始めた。全て自分が悪いのだと思う様になった。
ある日彼女は憎い憎い自分を傷付ける事を覚えた。突発的な行為であったが、腕に刻まれた傷を見た瞬間、何かから解放された思いがした。
醜く汚い自分が少しでも清められた気がした。
それでも、学校へ行けば感じる強い劣等感が消える事は無かった。
家に帰れば不安定な安定感をなんとか保ち、学校へ行けばせっかく保ったものなどすぐに崩れる。その繰り返しだった。
彼女はまた自分の腕を切り付けた。深く切る程に痛みが深まる思いがした。
しかし彼女は次第に闇を心地良いと感じる様になっていた。学校にいる人達が光だとしたら、自分は闇だと思った。
闇は心地良い温度で彼女を包んだ。彼女は次第に虚ろになっていった。笑い方など忘れたとでもいうように。
心に痛みを持ち、そしてその痛みに依存したのだ。
しかし心に闇を持ちながらも通う学校は地獄そのものであった。
彼女はまた腕を切った。血が流れた。しかしその血さえ、彼女は美しいと感じた。
彼女の心はボロボロであった。しかし心から打ち解ける相手などおらず、学校では出来る限り明るく振る舞った。
一人になればまた闇に溺れた。そして決して許す事の出来ない自分を切り付けた。何度も何度も何度も。
彼女の誰にも見せない心の傷は、彼女の腕に刻まれ続けた。
彼女は闇に溺れた。