小学5年の時、仲の良かったユキから頼み事をされた。
それが始まりのきっかけ。
「これ、ショウに渡してくれない?」
バレンタインのプレゼントだった。
近所に住んでいるチビなうるさいヤツ。
そんな印象しかなかったから、びっくりした。
下校時刻。
ショウがひとりになるタイミングを見計らって、預かりものを差し出す。
「受け取れない」
私だって、キューピッドを引き受けた以上、そう簡単には引き下がれず、受け取れ、受け取れないの攻防は延々続いた。
結局根負けしたのは、私だった。
「俺、好きなやついるから無理。」
最終的にプレゼントは彼が受け取ったという形だけつくり、実際は私が持って帰るはめになった。
「もぅ…。なんで私が。」
でも、ショウがあんな顔するなんて…意外だったなぁ…。なんて思いつつも、明日ユキになんて言おうか悩んでいた。
「オハヨー。昨日ありがとうね。夜ショウから電話あったよ。」
怒られはしても感謝される事はしてない私は、内心ドギマギ。
渡せなかった事を謝りそびれ、中身がオルゴールだった、あのプレゼントは、今もここにある。
曲名はリフレインが叫んでいる、だ。
それを聞く度に、本当にね…と苦笑するしかないけど。