「きりーっ。れー」
いつも学級委員長の号令のあとに言う挨拶は全く揃っていない。今日もバラバラの「さようなら」が教室から聞こえ、帰りのホームルームが終わった
「志後川!藤咲!行くぞ!」
尾仁辺が前の席からやって来た
「どこ行くの〜?」
と、二宮が横から訊いてきた
「お前には関係ねぇよ」
「志後川そう言うなって。これから“柩のオカマ”の家を見に行くんですよ。二宮さんも来ますか?」
藤咲が誘うと
「あたしはいいやー。だってあそこユーレイ出るんでしょ?」
「え?」
藤咲は凍りついた。怖いものが大の苦手らしい
「それにゆっこたちと遊ぶ約束があるから。じゃねー」
陽気に手を振る二宮を藤咲は苦笑しながら手を振り返した
「は、はは。ははははっ。ユーレイ?……聞いてねえぞおおおお!ユーレイが出るなんて!」
「し、知らなかったよ!藤咲が幽霊苦手なんてえええ!」
藤咲に両手で胸ぐら掴まれた尾仁辺がガクンガクンしながら答えた
「俺は帰る!冗談じゃない!」
鞄を掴んだ藤咲に志後川が言った
「逃げるのか〜。二宮に見に行くって言っといて〜。それを聞いたらなんて言うかな?
『えー。藤咲君って怖がりなんだ〜。ちょっとショック〜。怖いものなんて何もないって感じなのにね〜』」
「…よっしゃぁ!ワイは行く!行ったるでええええ!」
藤咲は泣いていた。思えばこの時が全ての始まりだったのかもしれない