愛美は自分の部屋でテラスごしに薔薇園を眺めて居た。
「コン コン」「お嬢様…秀二様がお見えでごさいます」ドアのノックと共にメイドが言った。
「お入りになって」
ドアが開き秀二が入って来た。
「愛美…彼は来てるの?」
「それが…彼は会えないと…」愛美は悲しそうに言った…「何故…彼は何故僕と話す気が無いのかな…」
「彼は自分に自信が無いみたいなのです…」
「と言う事は愛美を幸せにする自信が無いと言う事だよね…」
「…………」愛美は黙り込む。
「愛美…彼の所へ案内してくれないかい」
「でも…秀二さん…」
「大丈夫…彼の気持ちを僕が確かめるよ」
「秀二さん…ありがとう…」
「愛美…僕は愛美を愛してる…幸せになって欲しいんだよ…それに友人だろう?」
秀二はウィンクしてニッコリ笑った。
「秀二さん…」愛美は佐野との愛が無かったら秀二を愛していたかも知れないと思った。
愛美は秀二を佐野が居る車庫へと連れて行った。
「愛美…ここは…」
「秀二さん…彼が私の愛する方です」愛美は佐野を指さした。佐野は丹念に車を磨いていた。
「愛美…冗談はやめてくれないかな…」
「冗談ではありません…私は運転手の佐野を愛しているのです…」
「………愛美…僕は納得行かない…彼には愛美を幸せには出来ないよ」
「秀二さん…私は佐野と一緒になるのが幸せなの…お金とか地位とか関係ありませんわ。」
「愛美…僕がたとえ認めてもお父様や僕の父も認めないと思うよ」
秀二は悲しそうに話す。
「私は認めて貰う為ならどんな覚悟もしています…例えいばらの道であっても…」
「愛美…それ程までに彼を愛しているの?」
「はい…」
秀二は愛美の真剣な眼差しを見て何か決断したかのように言った。「…よし…僕は愛美の友人に戻るよ!そして力になるよ!」
「秀二さん…ありがとうございます!」
「ただし!…彼がもし愛美を不幸にしたら僕は愛美と結婚するよ…良いね!約束だよ…」
愛美は涙を拭いて微笑んだ。
佐野は二人に気付く事なく丁寧に車を磨いていた。
…つづく…