ララ [3]

ロミ  2006-04-16投稿
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髪は淡いベージュ。
少しウェーブのかかったそれは3月の冷たい風になびいていた。

一目惚れだった。

大してかっこいい訳ではなかった。
けど、声が素敵。
眼差しが素敵。

三年間もいて気づかないなんて…

私は何も見ていなかったんだ…


私は友達の卒業記念カラオケを断って彼を追った。

彼は中庭の枝垂れ桜の下で草むしりをしていた。

花はもう無かったが、私はこの木が好きだ。


私は後ろから、コツコツとローファーをならしながら、近づいた。
こっそり行って彼が驚くといけないと思った。


「花、終わったんですね。」

彼は軍手の白い部分でひたいを拭って私を見た。

「…そうだね。」

無視されるかと思った…

「草むしり楽しいですか?」
「別に楽しいわけじゃないけど嫌いじゃないよ。」

少し笑って彼はいうのだ、心地よい、
そう思った。

「私は好きです。草むしり…なんか楽しいから。」

私は何気なさを装って隣に座り込んだ。

一番近くの草をつかみ、むしる。
雀がないて、風が吹いて、私のストレートの髪がなびく。


「卒業生?」

彼は隣に座った私に軍手を手渡しながらいった。

「本当は手伝ってもらっちゃだめなんだろうけど…あ、軍手使って…」

「ありがとうございます。でも、わたし軍手は使わないんです。触っていたい…変ですね。」

「そんなことないよ。俺も軍手はあんまり好きじゃないんだ、汗かくからね…」
「じゃあ、どうして軍手使ってるんですか?」

「寒いから…」

しばらくの無言の後、私たちは草で一杯のゴミ袋を見おろしていた。


「ありがとう。おかげでずいぶん早く終わった。」
「そんな…」


「あの…」

「何?」

袋の口を結びながら彼がいった。

「いえ……帰ります。さようなら。」

好きな人いますか…

聞けない…
バカ…
聞けないよ…

そのまま私は一度も振り返らずに走った。


嘘です。


三メートルほどでUターンをして彼の袖をつかんだ。
「好きな人いますか…」

聞いてしまった…

「え…」

困ってる…
困るよね…
いきなり知らない、たった一時間ほど一緒に草むしりした女が、
好きな人いますか…

ありえないよね…



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