暗黒剣の国「カイストランド」の隣国、魔法剣の国「ジャストランド」。
その国境の町「ベイス」で、一人の少年がきょろきょろと辺りを見回しながら、首を傾げて、
「おかしいなあ…この辺のはずなんだけど…」
と、呟きながら歩いていた。
「あ、あったあった!鍛治屋『ウィンストン』。あの頃と変わってないなあ」
少年は一軒の家の前に立つと、ほっとしたように胸を撫で下ろして、懐かしそうにドアの上にある古ぼけた看板に目をやった。
少年がドアを開けると、カウンターに一人の若い女性が立っていた。
「いらっしゃいませ!剣の修復、加工、教練の事なら何でも御相談下さい!」
女性は入ってきた少年を見るなり、にっこりと微笑んで、言った。
「あ…いや、その…そういう事をしに来た訳じゃないんですけど…」
「冷やかしならお断りですよ?」
女性は相変わらず笑顔でいるものの、言葉には軽くトゲが混じっていた。
「ミリス、お客様に対して失礼でしょ!」
店の奥から様子を見に来たもう一人の女性が、ミリスを咎めた。
「ミリス…あ、ミリス姉ちゃんか!」
少年は驚いた顔で、ミリスの顔をまじまじと見つめた。