「どうしたの?まどかちゃん。今日は一人で来たの?」
会場に入ると、職場の先輩である百合さんがお客さんと一緒に下着の色を選んでいるところだった。百合さんは私に気付くとこちらにかけよってきた。
「いいえ、今日は妹を連れてきたんです。」
「どこ?」
「あれ、今一緒にいたんですけど。」
扉を開けると突っ立っているつっちゃんがいた。つっちゅんは誰かから来たメールの返信に一生懸命だった。
「もう、つっちゃん早くしてよ!何しとるの?」
まずそうに私の顔を見ながら、つっちゃんは携帯の画面に視線を戻す。何回か私と携帯の画面に目を行き来させたあと、
「ごめん……。」
とつっちゃんが言った。
「何が?」
「帰るわ。」
「ハ?」
「ごめん帰る。お姉ちゃん、家まで送って。」
「何言っとるの。ここまでどんだけかかっとると思っとる?」
「ごめん。今令ちゃんから今から会えない?ってメールがあって。私行きたいだもん。最近ずっと会ってなかったもんで私行きたい。」
「なにそれ。」
あんまりわがままを言わないつっちゃんだけど、約束も破った事ないくらい真面目なつっちゃんだけど、何かをこうと決めたら譲らない頑固な時がある。
「ごめん。いつかちゃんと埋め合わせするで!」
「つっちゃんひどい」
「ごめんね、お姉ちゃん。どうしても行く。」
「………。」
つっちゃんは、私の落ち込む様子を見て、送ってもらうのはやっぱり悪いからと、電車で帰っていってしまった。
私は一人残されて、惨めな思いだ。つっちゃんなんかもう知らないと心の中で叫んだ。