一体俺が何をしたんだ?
静まった空気のせいで、外の雨がうるさく聞こえる。
うろたえる佐々木だけが脂汗をかいている。
「滝がいないハズがない。嘘をついてる奴は誰だ?」
俺は何もしてない。危ない事に手を染めた事なんて一度もないし、ましてや消される理由なんて。
後ろの紗耶が不意に立ち上がる。
「ジッとしててね…」
してる。震えてはいない。
と、思った瞬間、意識が途切れた。
数十秒の空白。
何が起こったかはわからないが…いや、説明しようにも浮いてるのかもしれない。
陰すらない、凹凸もない真っ白な世界。
自分のスーツに着いた赤色の染み。
多分ピザのソースだと思う。
それと俺のスーツ。腕、手、靴下、靴。
自分だけの姿しか見えない。
妙な浮遊感。
ぬるい温度。
聞こえるのは呼吸音。
「たっすけてー」
変に声が上擦る。所ジョージみたいな声。
何も聞こえない。
返事もない。
マンションに帰りたい。
何故かそう思った。
さっきまで以上の空白。
ノイズ。砂嵐。
そして、俺は戻った。
元のマンションの、俺のベッドに。
夢か?時間は…かなり過ぎてる。
トイレの明かりがついてる。
消そうとボタンを押すと、「キャッ」と女の声がした。
紗耶の声。
思わずトイレを開ける。
「ぅわ、なんで」
扉を閉めて謝罪する事を考えてる。