「あ、あんたは…。ひょっとして藤ヶ咲の坊っちゃんでは?」
老人はそう言って藤咲の顔をまじまじと見た
やっと動けるようになった藤咲は困惑しながらも
「あ、あの人違いじゃないですか?僕は藤咲って言うんですが…」
「藤咲…?ああそうか!確か姓を変えたのでしたな!少し御待ちくだされ。今、親方様を御呼びします故」
「ちょ、ちょっと待ってください!俺は名字変えてませんから!昔から藤咲です!」
藤咲は新手の不審者撲滅措置と判断し、家主を呼ばせて堪るかと老人を制しながら、頭の中では必死に逃げる方法を考えていた
しかし、この老人が家に来た客を素直に受け入れようとする空気を藤咲は少し感じていた
すると突然、
「逃げるぞ!!二人とも!!」
尾仁辺は叫びながら二人の腕を掴み、門を飛び出して石階段を危うく転がり落ちるのではないかと思うくらい全力で下った
「…あの小僧は…」
庭に立ち尽くす老人が呟いた