「ハアッハアッハアッ。こ、ここまで来れば平気だろ…」
柩ノ宮邸から1、2キロ離れた誰も居ない公園のベンチに三人はいた。雲は既に紅く染まりきり、空の端は暗い闇空が顔を出していた
「尾仁辺の声がなかったら俺たちずっとあの中にいたよ」
尾仁辺は震えていて藤咲の声が届いていないようだった
「ありがとな、尾仁辺。」
志後川は尾仁辺の横に座った
藤咲は何か決心した顔つきで言った
「俺、もう一回あそこ行ってくるよ」
「はあ!?」
志後川は文字通り、目を見開いて藤咲の顔を見た。尾仁辺も上目で藤咲を見た
「や、やめとけって!今度こそ通報されっぞ!」
「でも、あのお爺ちゃん俺のこと知ってるようだったじゃん」
「ただのボケだろ?やめとけって」
「ん〜、そんな感じじゃないような…。とりあえず、謝るだけしてくるよ。名前も言っちゃったし」
「そうか…。じゃあ俺も行くよ」
「お、俺は行かない…。もう…あそこには行けない…。もう、無理だ…。もう…」
尾仁辺はさらに震え、冷や汗をかき始めた。見つかったことが相当ショックだったのだろう
「おい、大丈夫かよ?」
「志後川、尾仁辺と方面一緒だろ?送ってやった方がいいんじゃない?あっちへは俺だけで行くから」
藤咲は訳ありのような感じがして実際のところ、一人の方が都合が良かった
「わ、わかった。じゃあ頼むよ。わりぃな」
「うん、じゃあまた明日。尾仁辺、気を付けてな」
尾仁辺は下を向きながら頷いた。藤咲はまた柩ノ宮邸のある方へ戻って行った
自分の知らない自分自身を見つける為に