その日バイトが終って家へ帰ると、そこには『奴』がいた。
茶色く、モコモコのチッコイ生き物。
側へ近寄ると
ブルブルっと震えて用意されたゲージの中へ隠れた。
「この人怖いでちゅね〜」
相方が変な赤ちゃん言葉で犬に話しかけるから、私は少し気持ち悪くなった。
ふんっっ!!
見てろ。
私は昔から動物にモテるんだ。すぐなつくに決ってる!!!
ゲージを覗き込み、出来る限りの優しい声で
「ワンちゃん、おいで〜」
ゲージの中では
ケツをこっちに向けたままのワンコがまるで「あっち行け」みたいな感じで、私を横目に震えていた。
...... ( ̄□ ̄;)!!
あら、そうですか。
私がそんなに怖いですか。
いいです。
え〜いいですとも。
相方は笑いながら「怖いでちゅね」を連発している。
マジでウザイ。
私はゲージから離れ、(もう諦めた)テレビを見ながら一服していた。
つんつん…
振り返ると小っさいモコモコが私の後ろにいた。
少しずつ近寄ってくる。
戸惑いながら手を伸すと、クンクンと匂いを嗅いでペロっと舐めった。
…?
可愛い。
めちゃ可愛い。
一瞬にして私は心奪われ、その日の夜はこのチビスケを胸に抱いて寝たのである。