『それで良いさ―私だって戦争を求めている分けじゃない』
港リリアが就任してくれれば、差し当たりケンヤは満足みたいだった。
『それでは正式な話は役員会で―君達は一足先に行きたまえ。私も用意したらすぐ行くから』
港リリアと赤木マモルは挨拶し、ドアを開けて廊下へと消えた。
少しして内側から鍵をかけた梅城ケンヤは、会長卓から衝立一つ隔てた向こうの応接ブースに回り込み、ソファーにどっかと腰を降ろした。
敵を騙すにはまず味方からと言うが―\r
『だんだん人が悪くなってゆく気がするな』
自嘲気味にケンヤはつぶやいた。
戦争が起きるかも知れない?
違うね。
戦争は起こされる物なのさ―\r
人によって―\r
この場合は俺が起こすんだがな―\r
そう。
梅城ケンヤはもう用意しているのだ。
戦争を―\r
何故か?
(本当なら十一月の選挙まで待つべきかとも思ったが)
いよいよ始まるのだ。
ケンヤの計画―\r
生徒1000名の抹殺計画が―\r
学校内司法自治全権委任法の施行以来、全国の生徒会に暴君が現れ悪の限りを尽した事がある。
無実の生徒が処刑された事もある。
学校同士の抗争で死者が出た事もある―\r
だが―\r
1000人も死んだ例しはない。
そこまで考えて、膝の上で組まれたケンヤの両手はガタガタ震え出した。
ケンヤは恐れていた。
脅えてもいた。
(俺は―俺は1000人も殺すのか。まだ13才で、車すら運転出来ないこの俺が)
もし実現したら―\r
日本史上最大の大量殺人だ。
自分は史上最悪の大量殺人鬼だ!
くそっ
やらねばならないとは分かっているが、ここまで残虐な所業まで本当にやらなければならないのか?
くそっ―\r
だが―\r
『いいや、俺はやる』
名状し難い目付きから妖しい光を放って、ケンヤはそう断言した。
自分に向けて―\r
『それでイジメがなくなるのなら、俺はやる』
いつしか手の震えは止まっていた。
そして、ケンヤはズボンのポケットから携帯を取り出した。
かけた相手につながれば―\r
もう後には引けない。