アゲイン!!

KooooH  2008-01-29投稿
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『さぁ、4コーナーを回って、直線!!先頭は、以前青い帽子、2番人気のグッジョブ!!1番人気、ランアンドガンが内からスルスルと抜けるか!?』

府中の長い直線に入り、最後の攻防戦。スタンドは大いに揺れる。上位人気の2頭が力強く抜け出した、天皇賞・秋。

『おら〜!!抜かせ〜!!』

『そのままいっちまえ〜!!』

スタンドから声援が飛ぶ。人々はみな、自分の応援する馬と騎手に、その叫びを後押しとして送り、一縷の望みを託す。

『はぁっ、はぁっ…』

そんな中、俺は懸命に馬を追っていた。最後方からの追走。人気も2桁台。無冠の古牝馬。だけど、そんな俺達にも、少なからず声援が飛んできているのがわかる。しっかり、この耳に届いている。身体で感じている。
…手応えは抜群!!
その声に、答えられる!!

『グッジョブ先頭!!内からランアンドガン!!外グッジョブ、内ランアンドガン!!いや、大外からつっこんでくるのは、なんとモスキートミルク!!』

場内がどよめく。
俺は、確信した。

『…いける!!』

『大外からモスキート!!モスキートミルクだ〜!!しかし、内がまだ粘っている!!3頭並んで、ゴールイン!!勝ったのは、なんとモスキートミルク!!G?初制覇の舞台は天皇賞・秋、鞍上はこれまた初の栄冠、柚木康介!!』

…途端、場は静寂に包まれた。1、2番人気のマッチレースの様相を呈していたこのレースをさらったのは、牝馬限定G?すら手の届かなかった、人気薄の4歳牝馬。ましてその鞍上は、まだ2年目の若手。しかし、その静寂も、すぐに熱狂に変わる。

祝福を受け、俺達は勝利の味を噛みしめた…。

…それが、モスキートミルクと俺、2人にとって最後のレースとなった。
モスキートミルクは、次のレースの調整中に怪我を発症、引退を余儀なくされ、子供を産むため繁殖牝馬として北海道へ旅だった。一方で俺は、その後レース中に落馬し、引退せざるを得ない状況になってしまった。

…輝きを放った直後、無情にも堕ちた栄光。
しかし、次のステージは、別の形で、もう始まろうとしていた…。



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