「き、鬼島さん! 神さんと劉さんの組が …… 全滅です。 井田さんも‥」
「みたいだな。 あれを見ろ、河合」
必死に駆け続け、息も荒く報告を始めた男の言葉に口をはさみ、鬼島義行はおもむろに立ち上がっていた。
(そんな馬鹿な……)
河合と呼ばれた男は、信じがたい光景を目にしている。
「お前の足に追い付く男がいようとはな。 ふん、面白くなりそうだ」
舌なめずりでもしそうな表情で言うと、鬼島はこちら目がけてまっしぐらに駆けてくるリン達を、迎え撃つ態勢に入った。
「剛!危ない!」
キン、キン、と火花を散らしてニードルナイフを払いのけたイーズは、四人の男たちの間を風のようにすり抜けていた。
「有難う。 だけどここは僕らに任せてくれ」
「久々に飛龍をやるか?晋よ」
村山剛の言葉に山際晋は頷き、八掛掌(はっけしょう)独特の構えを崩す。
ジェフのナイフを、前腕にはめた鋼鉄の防具で跳ね返した剛は、同じく九節鞭(くせつべん)で木崎の攻撃を巻き落とした晋と同時に反撃に転じていた。
「ふーっ、や〜っと敵の本陣にご到着かぁ … おおっとォ、危ね」
横合いから繰り出された短い槍を棒で叩き落とすと、リンは李兄弟に手で『離れろ』と合図をする。
「小僧、名は? 俺は鬼島義行だ」
「リン・パイロンだ。 おっさん、寿命を悟って墓碑名を教えてくれるってのかい?」
「ふん、口の減らんガキだわな。 誰に殺されたか知らなきゃ、お前があの世で困るだろうが」
まるで世間話をしているかの様な会話を交わしながら、鬼島とリンは、凄まじい闘気をぶつけ合っていた。
鬼島は、両手の1メートル程の黒光りする棒をバシッ!と打ち合せ、エスカリマ(棒術の一種)の構えに移っていった。