* * * * * *
あたし達が辿り着いた場所はー
あの、いつもの公園だったー。
あたしが一人で来るのはいつも夕方だったからー
こんな真っ昼間に来たのは初めてだったー。
公園の中ではー
小さな子供連れのお母さん達が、子供同士を遊ばせていたー。
如何にも今日が公園デビューかな‥と思わせる、若いお母さんも居たー。
そんな微笑ましい親子が三組居るだけでー
質素な風景の公園に華やかさを与えていたー。
あたし達は公園の隅にある、木製のベンチに腰を掛けたー。
『‥‥くぅー。足痛ぇー。』
そう言って、北岡はあたしの方を見て笑ったー。
『あはは。あたしも‥。久々に思いっきり走ったから‥。』
あたしは、まだドキドキしていたー。
思いっきり走ったせいだけではなかったー。
『木下の泣き虫ぃ〜!!』
北岡は悪戯っぽくそう言うと、両手であたしの頬を挟み込んだー。
『う゛〜‥。北岡君‥‥。』
あたしの顔は、唇が尖ってて、アヒルみたいな顔になってたと思うー。
『‥‥涙のアト‥。』
北岡は親指で、優しくあたしの目尻を拭ってくれたー。
優しくされたのとー
安心したのとー
嬉しくなったのとー
少しの不安とー
色んな気持ちがミックスされて‥
あたしの涙腺がまた緩む‥‥。
ぐしゅっっ‥‥‥。
『ほら‥。また泣くぅ〜。木下の泣き虫は、どうやったら直るのかな?!』
次の瞬間ー
北岡の少し斜めに傾けた顔がー
涙でぐちょぐちょのあたしの顔に近づいたー。
北岡との初めてのキスはー
涙で少し、しょっぱかった‥‥。