「ムードを考えろよ」微笑む先生と私の間に優しく風が吹き抜ける。先生自慢のヘアースタイルと水色のYシャツが揺れる。私の髪も無造作に飛ばされる。髪のモザイクの間から温かな瞳で私を見つめる先生の姿が見えた。すると先生は白いズボンのポケットに手を突っ込んだまま歩み寄ってきた。
「寒くない?」手を出して先生は私の肩を抱いてくれた。
「寒くないです。…春の海か。いつもこうして女のコを口説いてるの?」私は結構真面目に問うた。
「何言って…!?」半分笑って先生は言ったが私の表情を見て、黙った。「初めてだよ、春の海なんて」二人を沈黙が包み込んだ。