名ばかりの同盟校・第一中学校会長・太田カツヒロは戸惑いの連続だった。
【やり方を選ぶとは?】
『彼女達はすぐ殺さなくて良い―代わりに登下校のルートを指定してそれ以外認めない様にしてくれ。Y区内I飲食店街を必ず通るよう』
【無茶です!】
携帯からは太田カツヒロの絶叫が響いた。
【日本最悪の場所ですよ、あそこは】
太田カツヒロは慌てふためきながらまくし立てて来た。
【女子中学生が歩ける所じゃない!最悪乱暴されて殺されてしまう!!あそこは―あそこは!!!!】
『東京でも最も荒れてる不良校の縄張り―そうだろう?』
梅城ケンヤは全てを知っていた。
否。
事前に調べていたからこそ、こんな処刑方法を指示して来たのだ。
ケンヤは携帯を持ちながらソファーから身を乗り出し、
『だからこそ意味がある。自分の手を汚さずに、向こうに始末してもらえるじゃないか?おまけに君は被害者を装う事で全校生徒の同情を集め、より高い支持と結束が手に入る―願ったり叶ったり、正に一石二鳥―いや、三鳥の方策じゃないか』
【で、ですが―】
『考えてもみたまえ、たかがイジメグループ三人を始末しただけで、これだけの成果だ。是非ともこの案で葬って欲しい』
携帯の向こうで、太田カツヒロは震えていた。
梅城ケンヤは正しい。
だが、悪魔の誘いだ。
やれば自分も《共犯者》になってしまう。
もう逃げられない。
誤魔化しも出来ない―\r
【お、お待ち下さい】
ほんのわずかの勇気を奮って、太田カツヒロは抗弁を試みた。
【いくらなんでもむご過ぎます。三人組はただちに逮捕します―ですが処刑はしばらくご猶予を】
『出来ない』
ケンヤは鬼の形相でつっぱねた。
だが、太田カツヒロは珍しく粘った。
【わ、私にも良心が有ります。死ぬと分かっている場所に我が校の生徒を送り込めません―それに、それに】
太田カツヒロは最後の力を振り絞り、本来なら言わねばならない事をケンヤに伝えたのだ。
【わ、私の学校にも最低限度の独立があります―いくら梅城会長でも我が校生徒の処刑や、増してやその方法まで命令は出来ない筈です】
そう言い切って、太田会長は脱力して床にへたり込んだ。