言い訳はいらない。
何もいらない。
欲しいのは
貴方の愛だった。
祖母の葬式の日、伯父が海外から駆け付けて来た。
今更、ばぁばが死んだ後に息子面するなんて…何てズルイ人だろう…。
伯母は結局来なかった。
最後の最後まで何て親不孝な人だろう…。
葬式が終って、伯父は
「大変だったね」
と人事の様に言うと、私に一万円札を5枚握らせて
「仕事があるから」
とまた海外へ帰って行った。
火葬する日、私は祖母に
「ありがとう」
と最後の挨拶をして、冷たい祖母の顔に触れた。
優しい、安らかな顔だった。
火葬が終って、骨だけになった祖母が家に帰って来ると、母がやって来た。
「今更何よ!!」
母は目に涙を溜めて、震えていた。
「ゴメンね…ゴメンね…」
遅過ぎる…。
会いに来るのが遅過ぎる…。
「帰ってよ」
私は母に冷たく言うと、急いで寝室に入って、布団に顔を埋めて泣いた。
我慢していた色んな物が全部溢れて、声を上げて泣いた。
中学2年生の時に、祖母が検査入院した。
店はしばらくの間、休む事になって、私は新聞配達の他に、内職のバイトも始めた。
祖母はここの所、食欲もなく、体の調子が悪そうだった。
見舞いに行った時、祖母が死んだらどうしようと、病室で泣いてしまった。
「泣くんじゃないよ。誰が死ぬもんか!!」
祖母はそう言って、シワシワの手でピースしてみせた。
それを見て私は笑った。
厳しい祖母に似合わないピース。
祖母も笑った。
初めて祖母の笑顔を見た気がした…。
〜六話へ続く〜