曇りの様なそうでない様な空。
でも、これだけは言える、寒空なんだ。
人とは不思議だ、直に温度を感じていないのに何故か寒いとか暑いとかが感じで分かる。
それは空だけではない。
人の表情、その場の空気、様々な物を人間は感じで寒い、暖かい、暗い、明るい、重い、軽いを感じる事が出来る。
佐高は寒空を黙って見上げ続ける絵梨原が暗いのに気付きかけたが、自分の考えをすぐに否定して、いつもの様に話かけた。
「スイスに行ったら先ず何するのかな?」
絵梨原は悲し笑いのような笑顔をつくり、
佐高の方を見て、
「スイスって何があるんですか?」
佐高が待ってましたと言わんばかりのとても明るい笑顔でスイスについて語り出した。
―長いので省略。―\r
「ま、まあ楽しそうな所ですね、楽しみですね。」
絵梨原は呆れ気味にそう言って、もう一回寒空を見上げてみた。
やはり何度見ても寒空は寒空だ。
もうあの楽しかった日々には戻れないのか?
ヤクザの事を気にしながらだったが、とても楽しく、笑顔が絶えなかったあの日々。
戻りたい。
その時、絵梨原のポッケに入っている携帯がマナーモードのままメールを知らせた