甘いワナ?

夢月  2008-01-31投稿
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彼女とキスを交わした、あの時が懐かしい。



彼女と交わしたキスは、俺のファーストキスだった。
男にとって自分のファーストキスなんて、特に興味はない。

ただ、あの瞬間が一番幸せだった…


彼女の名前を呼ぶ声…

彼女の潤んだ瞳…

彼女の甘い吐息…

彼女の唇の感触…

彼女の――――…


彼女の一つ一つが愛しく、
彼女の一つ一つに欲望をかき乱された。


壊れるほどに強く抱き締めたい――


彼女には、こんなにも自分を想ったことはないだろう。

ただ断り切れずに付き合っただけだから。



――今思えば、あのキスをした少し前から彼女の様子がおかしかった。

うわの空で話を聞いていることもあれば、ため息を吐いていることもあった。


あの時からすでに愛想を尽かされていたのだろうか。

それとも、
他に好きな人ができていたんだろうか。



――だったら、なぜ…


――なぜ、キスを受け入れたのだろう。


そこまで考えを巡らせて、ふと気付いた。


今まで何か一つでも彼女が意志表示をしたことがあっただろうか。


好きな人がいても言えずに悩んでいたんじゃないか。
そう思うと、彼女への怒りは自然となくなってしまった。


――彼女に悪いことをした

自責の念を感じたが、
別れようという気持ちは起きなかった。


意地を張っているわけでも、困らせようとしているわけでもない。


ただ、

自分でも説明できない感情が、彼女を手放すことを拒んでいた。



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