僕はまだ若い。
でも、これまでの僕の短い人生の中には決して忘れる事の出来ないふたつの太陽との思い出がある。
それは同じ時にやってきたのではない。
が、退屈な日常を素晴らしく輝かせてくれた僕にとっての紛れもない太陽だ。
僕は夜空に輝く星の様に自ら光を放ち輝くタイプの人間ではない。
だから僕にとってはホントに大切な存在だ。
それは今も変わる事はない。
そのひとつ目の太陽。
エリカに出会ったのは高一の時だった。
その時の僕は世の中全ての事を斜に構えて見、反抗していた気がする。
いや、実際そうだったろう。
僕は特に受験戦争の荒波に揉まれる事もなくすんなり地元の市立高校に通う事になった。
一学期は自分なりには上手く過ごしていた気がしていたが教師には嫌われていたようだ。
天邪鬼というか、昔から強いもの、力を降りかざす輩に反抗する損な性癖が有るためだ。
周りくどいけれど、僕はこんな生活を送っていた事を書いておく。
と、いうのもこういう風に僕が過ごしていた事を書いておかないとその後の話の説明が面倒だからだ。
彼女と初めて会話を交したのは忘れもしない。
まだ、真夏の様な二学期の始まりの日だった。
新学期ということで席替えをすることになった。
それまでは男女で教室をまっぷたつにしていたから初めてミックスされる事になる。
しかし、当時の僕は他のヤロウ達程は浮足だってはいなかった。
『早く終わらんかなぁ』
そう、思いながらクジを引く。
引いた紙には番号が書いてあり、進行役の級長が黒板に適当に書いた席の番号と照らし合わせる。
窓から2列目の前から2番目。
前の席にはこれまで僕の後ろの席で馬があっていた新井になっていたので、『まぁまぁかな。』
そう、思いながら席を移動する。
民族大移動。ゲルマン民族ミナゴロシだ。
僕が席につくと隣に彼女が荷物を持って座った。
なぜ10年以上前の他の人にとってはホンの些細な日常を昨日のことの様に思い出せるのか本当に不思議だ。
だだ、間違い無くその瞬間は訪れた。
いま思うとこの瞬間がこれまでとこれからを大きく分けた瞬間だったのかもしれない。
彼女がいなければ。
彼女と出会わなければ。
僕の人生は違ったものになっていたかもしれない。
だから、その存在は大きく。
僕にとっては紛れもない太陽だった。
暖かで光輝く、全てを包み込んでくれるような。
太陽だった。