途切れ途切れの記憶のフィルム。
真っ白なあたしの脳裏。
ぼんやりと初めに浮かび上がるのは、
自転車をこぐ母の背中だ。
うしろの荷台で揺られながら、
母の背中が大きくて、前が見たいあたしは泣いてる。
道は長い上り坂。
ひぃひぃふぅふぅ母の呼吸を聴きながら、
なにかしらの野菜に似ている2本の足が、ペダルをこぐのを見つめている。
ママ頑張れ〜
ってフザけて笑う
背中しか見えない母の声が答える。
ちぃちゃんが降りたらママ楽なの。
記憶のフィルムがカタカタ揺れる。
母の顔に、暗い影が落ちている。
今日、私は母に殺された。