佐山の計画とはこうだ。
まず佐山が包丁を隠し持ち、寺田と二人きりになる。そして刺し殺すのだが、争った形跡を残しておく。
そのあと警察を呼び、事情を話すのだか、ここからが大切だ。
寺田に呼び出されたと言い、「お前の妻と付き合っている。だから別れてくれ」そう言われたと話す。
もちろんそれを断ったら、寺田が隠し持っていた包丁を取りだし、襲いかかってきたと言う。
そして揉み合っている間、身の危険を感じ、仕方なく刺し殺したと白状する。と言う計画だ。
この計画通りに行けば、防衛の程度を超えた過剰防衛となり罪になるのだが、情状によりその罪を軽減、うまくいけば免除もできるかもしれない。
それが狙いである。
ある日、罪が軽くなる可能性があるとは言え、このような危険な行為が出来るのか、考えてみた。
それで分かったことだが、寺田がこの世からいなくなることに取って代わるものなどなかった。
だから後は実行するだけだ。