『ほう?』
梅城ケンヤの口調が明らかに変わった。
『では君は俺に協力出来ない―そう言いたいのかね?』
【い、いえっ…】
携帯の向こうからは太田カツヒロの脅え切った声が聞こえて来た。
毅然さからは程遠い声が―\r
『では改革路線にも、もう協力しない―そう言うつもりかね?』
【ち、違います】
所詮は属国の主。
どれだけ正論を並べ立てても、太田カツヒロにこれ以上逆らえる筈がない。
『それならそれで構わんさ!』
叩き付けるように梅城ケンヤは声を荒げた。
『ではまず君の学校から討とうか!?私と他の同盟校の全軍を併せてな!!!』
そうだ。
太田カツヒロに逆らえる訳がない。
彼が所属した陣営の理想に。
否。
どれだけ素晴らしくても《力》あってこその理想だ。
力なくして理想は実現出来ない。
梅城ケンヤにはその力がある。
太田カツヒロにはそれがない。
自分の信念を貫く力も、他者の押し付ける信念を拒む力も、彼には最初からないのだ。
【い、いえっ】
太田カツヒロは悲鳴にならない悲鳴を上げた。
『考えても見ろよ―我が第三中学校より更に腐敗して荒廃を極めた君の学校に援軍を送って治安を回復し、それにつけ込んで乱暴の限りを尽していた不良校の連中を追い払ったのが俺の生徒会―\r
無能・無責任な先会長をリコールして君をその地位に就けてやったのは他ならぬ俺だろうが!!!これだけしてやって逆に頼めば《出来ません》だと!?良く言えるよなこの恩知らずが!!!!』
遂に本性と本音を剥き出しにしてケンヤは容赦なく相手をとっちめた。
だが、その言ってる内容はほぼ全て事実だ。
就任早々混迷を極めている他校に乗り込み、傀儡政権を作って置いたのだ。
絶対逆らわない・逆らえない傀儡政権だ。
仮に逆らってもこの様に圧力をかければ結局は同じ。
それでも従わなかったら、頭をすげ代えればそれで良い―\r
『しっかりしろよ太田会長よ!!!』
興奮のままソファーから立ち上がり、暴力団ですら恐れ入る様でケンヤは凄んだ。
『お前の代わりなんかいくらでも居るんだぞ!!!嫌なら他人に任せるさ!!!あまりいい気になるなよ!!!最初から選択肢はないんだよ!!!やるか!やらないか!!!!早く決めろよ!!!!!』