『大体追い払ったとは言えその不良校は今だ勢力を失ってはいない!だから俺が討つと言ってるんだろうが!!!これは君の学校のためでもあるんだぞ!!!しかも血を流すのは俺達だ!!!
そのためには口実が要るんだよ!!!口実がだ!!!!だから死刑囚を使えと言ってるんだ!!!!え!?今まで陰険なイジメを楽しみ何人も自殺させた連中なんだぞ!!!違うのかよ!!!!!』
脳の血管が切れんばかりに梅城ケンヤは絶叫し、
長い長い沈黙が2台の携帯の間を塞いだ―\r
やがて―\r
【わ、分かりました―】
手に持つ携帯からケンヤの耳元に、か細い声が響いた。
【三人組はおっしゃる通りに致します。ですからどうか我が校を攻めないで下さい】
太田カツヒロは全面降伏した。
仮にも一校の主だ。
だが―\r
【で、ですから私の地位はこれまで通り】
『良く決意してくれた』
打って変わってケンヤはいつもの朗らかな様子に戻った。
『それでこそ我がイジメ撲滅派の盟友だ―私も心強いよ。三人組の始末は10日後にお願いしたい―出来るかね?』
【は、はい―】
太田会長に、最早逆らう力はなかった。
気概もなかった―\r
大国に圧迫される小国のこれが現実だった。
そして、その点を差し引いても、太田カツヒロ会長は最終的には保心しか頭にない卑屈な男だったのは譲れない事実だったのだ。
他校の力に頼り・その勢威を傘に着て
自ら犠牲を出さずに・ひたすら甘い汁を吸うしか考えない―\r
所詮梅城ケンヤに敵う相手ではない。
また、その程度だと見抜いたからこそ、ケンヤも彼を会長位に据えて第一中学校を遠隔操作すべく利用しているのだ―\r
『よろしい』
ゆっくりとソファーに戻り、ケンヤは満足の意を示した。
『ではその後に私は同盟校を率いて君の所へ向かうよ』
【な、なぜですか!?】
『演習だよ。もちろん君も風紀委員を率いて加わりたまえ―全国に見せ付けてやろうじゃないか。我々改革派の力を』
【は、はい】
全てを知らされぬままに太田カツヒロはそう返事するしかなかった。
携帯を閉じてケンヤはソファーを後にし、窓際に向かった。
眼下では既に体育の授業に入っている生徒達が準備体操にいそしんでいる。