貴更は、一呼吸置いてから、またタバコに火を点けた。
「で、気になることって?」
「実は、桜木くんには前から相談に乗ってもらってたんやけど…。」
「へぇ、あいつ、相談に乗れるタイプやったんか。」
貴更は奈緒が何を桜木に相談していたのか、まだ、この時点ではさっぱり分かっていなかった。
「だって、優木くんには相談できないから。」
「……え?そんなキャラじゃないってか?」
「じゃなくてね、…。」
貴更は、これって、ひょっとしてのまさかの話……と薄っすら気が付いた。
でも、返事の仕様がなくて、体が熱くなるのだけが分かった。
「あの…それって。笑えない話やんなぁ……?」
奈緒はそのことに触れずにポツリポツリと話し始めた。
「うちの店、新規オープンだったでしょ?みんな最初から一緒に働いてて。男の子って桜木くんと優木くんだけでしょ?」
「そうやな、ちょっと肩身が狭い気もしたけどな…。」
「合同面接のとき、優木くんの後ろにいたのは私なの。」
「へぇ〜。」
合同面接だったので、面接に来た人の受け答えは他の人には丸聞こえだったことを思い出した。
「その時にね、優木くんの面接を聞いてて、私、こんな人となら一緒に働きたいなぁって思ってて。」
「はぁ…。」
「で、顔合わせの日にね、優木くんがいるのを発見してね、嬉しかった。」
「そうか。」
「それから、時々、車で来れない時、桜木くんに送ってもらってたんやけど、ある日、言われたの。」
「実は、優木くんのこと、好きなんじゃないかって。」
貴更は動揺して、吸いかけのタバコを灰皿に置いたまま、また新しく火を点けた。
「で、その…えっと…」貴更は言葉を飲み込んだ。