ケータイの
着信ランプが騒いでる
アタシとお揃いの
ストラップがバイブで揺れる
爆音の中、
彼氏のタカシは
マイクを握って
気持ちよさげに歌ってる
アタシは今
このケータイを
鳴らす相手を知っている
元親友の
今は他人の
ナツミが相手に決まってる
点滅を止めないケータイを
アタシはそっと
手にとって、
黙って部屋から廊下に出る
トイレに行って、壁にぶつけて、それから便器に落として流す。
戻るとちょうど
タカシが歌い終わったところ
アタシの入れた
曲がゆっくり流れ出す
タカシはアタシにマイクを渡し
もう次の曲を選んでるアタシなんかいないみたいに
口をパクパク動かしながら、
体をゆすって笑ってる
アタシはゆっくり息を吸い込み
掴んだマイクで
タカシの頭をぶん殴る
力強く、何度も何度もぶん殴る
飛び散る赤が
ブラックライトでキラキラ光る
タカシは必死でケータイを探す
アタシのケータイが鳴っている
バッテリーが切れそうだ