私は彼に話し掛けてみた。
『あの…あの、この間病院で…助けて頂いてありがとうございました。』
私は緊張しながら彼に言った。
彼は私の顔を見て、にこっと微笑んでくれた。
『もう、退院したんだね。よかった。』
彼の笑顔と優しさに、私の心はキュンとした…
こんな気持ちは初めてだった…
いつの間にか電車は目的地に着いていた。
彼は人込みに紛れて、見えなくなった…
人が押し合う中を掻き分けて、私は彼を探していた。
駅のホームを見渡しても、彼の姿はなかった…
やっとお礼が言えたのに…
私は、駅のホームで立ち尽くしていた。
こんな気持ちは初めて…
名前も知らない…
私…あの人に恋したんだ。