「……また、会えるかな?」
「うん。またきっと会えるよ」
小さくなっていく後ろ姿を見送る。旅荷物を背負った、三人の少年少女たち。まばらに細い木の立つ緑の平原の中を、くねくねと白い道が続いている。昇ったばかりのギラギラした朝日を半身に浴びて、こちらを振り返ることもなく
、彼らは道の上を歩いていく。
「――さびしいなぁ」
「……。そうだね」
「私たちも、いつか、別れたりするのかな?しないよね?ずぅっと一緒だよね?」
「それは――、わからない」
「どうして別れなきゃならないんだろう?一緒にいてはダメなの?それとも……」
「うん。一緒にいることは、『できない』んだ」
私は彼を見つめた。私より朝日に近い所にいる彼の横顔には、黒く影が落ちている。私の好きな、いつもの落ち着いた顔。真っ直ぐに、真っ直ぐに、平原の向こうに消えて行く三つの背中を、見ている。
私は彼が好きだと思った。だから、離れたくないと思った。だけど。
「いつかは私、自分の道を行かなくてはならないんだね」
彼は私の声の調子に気づいて、こっちを向いた。それから、そっと手を私の顔に近づけると、ゆっくりと指で私の頬に流れる涙をぬぐってくれた。
「でも、それまでは一緒にいる」
「うん」
「一緒にいて、君を守るから」
「……うん」
私たちは、三人が完全に見えなくなるまで、そこに立ち尽くしていた。太陽はいつの間にか地平線より遥かに高い場所にいた。三人が遠くなって、視界から消えてしまってから、彼は私に言った。
「僕たちも、そろそろ行こう」
「――うん。」
私たちは歩き出す。彼らとは違う道を。朝日と呼ぶには昇りすぎた太陽に向かって……。
いつか別れるのだろうか?大切なものすべてと、離ればなれになって、たった一人になる時が来るのだろうか?
その時、私には何もできない。運命に逆らうことなんてできない。私だけじゃない。誰だって、いつかは通る道だ。
さびしいけれど、つらいけれど。『その時
』が来た時、後悔したくない。
だから。
後悔しないように、生きていく。