「ハル!速く走れ!」
「お前がな!」
後ろをドタドタと走る野口が促す。
戦闘配備『赤』が発令されて数分。ハルと野口は完全に出遅れていた。
と言うのも大きな腹を丸出しで寝ていた野口が右靴が見つからないと騒ぎだし、諦めるという結論に達するのに数分を要したからだ。
「急げよ!」
「お前がな!!」
ドタドタっと格納庫に転がり込む。馬鹿野郎!!と若山に怒鳴られ、はい!すみません!を5回連呼し、自分の「零」に乗り込む。
「零」。零式可変型戦闘機の略である。アメリカのE・アンダーソン博士によって、それまで空想と馬鹿にされてきた二足歩行兵器『WW(WalkingWeapon)』の優位性が提唱されたのは十年前だった。
第14次中東戦争における米軍の軍事介入で20機が実戦投入される。戦闘機形態から瞬時に人型に変身するというWWは半年の戦闘で被撃墜零。
その後、各国は必死になって二足歩行兵器の開発に着手した。
日本も早期から研究を重ね、現在日本軍の主力WW、零式可変型戦闘機『零』を完成させるに至る。
「たかが補給艦と思って侮るんじゃねぇぞ!」
ハルを含めた10人の前で若山が怒鳴る。
「大和魂見せてやれ!!」