「今日って二月四日だよな」
「ん?ああそうだけど、」
「知ってるか?一般に二月四日って立春って言ってな、小さな春が来るんだってよ。」
「そうなんだ。」
「見てみろよ。」
金崎は空を指差した。
さっきまで寒空だった空が照り始めた太陽によって、何だか暖かく見えた。
「じゃあ帰りますか。」
「おう!」
飛行機の機内で絵梨原は暖かくなった空を見ながら、
「シテルアリガトウアイ、シテルアリガトウアイ。」っと呟いていた。
そして飛行機はスイスに向けて何の問題も無く飛んでいく。
金崎が河内の原付きの後ろに乗っていて、暖かい空を見ていた。
息はやはり白い。
移動している人は全て防寒具を着ていて寒そうだった。
原付きが信号で停まりふと電柱のふもとを見ると、一輪の花が咲いていた。
金崎は花を見てニッコリ微笑むと原付きと一緒に去って行った。
原付きの風で咲いていた花が微かに揺れた、
空には暖かな太陽、地上には暖かな空気、そして、金崎、絵梨原、河内、佐高の四人の心には暖かな花が咲いただろう。
今日はとても寒くてとても暖かな日であった。
― END ―